8ビットパソコン資料倉庫

- 1984年度の各社パソコンの出荷台数・シェア -

1984年(昭和59年)4月~1985年(昭和60年)3月の1年間での日本国内での各社パソコンの販売台数・シェアに関する情報を見つけたので、いろいろとグラフにしてみました。
データの出典:「ヤノ・レポート」昭和60年9月17日号
ちなみに本ページでは、家庭用・ホビー用に使用された8ビットパソコンのみを扱います。また私の趣味で、MSXが占める割合を青くしています。

※初出時はカシオ計算機とパイオニアを入れ違えてしまいましたので、訂正します。(2023/2/9)
※富士通のFM-11について追記しました。シリーズ別販売台数(シェア)のシリーズ合算方法を変更しました。(2023/3/12)


各社のシリーズ別販売割合

まずは、各メーカーが販売していた8ビットパソコンの、各メーカー内でのシリーズ別販売割合のグラフをご紹介。

NEC
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※NECは既にPC-9800シリーズ等の16ビットパソコンも販売していましたが、本ページでは8ビット機に絞ったグラフを掲載します。
NEC シリーズ別販売割合(1984年度) (データ:ヤノ・レポート 昭和60年9月17日号より)
当時「パソコン御三家」と呼ばれたメーカーのうちの一つ、NEC。
やはりというか、PC-8800シリーズが半分以上を占めていました。PC-8800シリーズは、PC-8001との互換性もあることと、ビジネスとホビーの両方の用途で需要が強かったという印象があります。 特に年度中に発売されたPC-8801mkIISRは、その後のPC-8800シリーズのスタンダード機ともいえる名機となりました。
データ元ではPC-6000シリーズとPC-6600シリーズを別々に集計していますが、この2つを合算するとP6シリーズもなかなかの地位を築いていた感があります。
シャープ
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※シャープは、MZ-5500等の16ビットパソコン、MZ-3500等のビジネス用8ビットパソコンを販売していましたが、本ページでは対象外とします。
シャープ シリーズ別販売割合(1984年度) (データ:ヤノ・レポート 昭和60年9月17日号より)
当時「パソコン御三家」と呼ばれたメーカーのうちのもう一つは、シャープでした。
X1強いです。MZ-1500だけでなく、MZ-700シリーズも2~3年前の機種なのに根強い人気があったようです。
データ元にはX1turboという表記が無かったので、X1turboがX1に含まれているかは不明です(多分含まれているとは思いますが)。またMZ-2000とMZ-2200をひとまとめにしているのは、データ元で合算しているからです。なおMZ-700シリーズは、MZ-711、MZ-721、MZ-731の3つを総称したものです。
富士通
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※当時FM-11シリーズも販売しておりFM-11シリーズには8ビット機も含まれていましたが、データ元では全て16ビット機として扱っていること、ビジネス用マシンであり家庭での利用はあまり一般的ではなかったと考えられることから、本ページではFM-11は対象外とします。また富士通はFM-16βなどの16ビットパソコンも販売していましたが、こちらも対象外とします。
富士通 シリーズ別販売割合(1984年度) (データ:ヤノ・レポート 昭和60年9月17日号より)
富士通は、FM-7がヒットしたことで、この時期はNEC・シャープとともに「パソコン御三家」と呼ばれるようになっていました。
その富士通がMSXに参入するというニュースは、「御三家のうちの一社がMSXを発売する」ということで話題になりました。富士通のMSX参入1号機はFM-Xで、FM-7と本体同士を接続することで両方の機能を連携動作できる…という特技がありました。
しかしそんなFM-Xよりも、FM-NEW7が10倍以上売れた、という円グラフです。FM-Xはわずか5%で、さらにMSXの中でも富士通のシェアが2%程度でした。1機種のみで撤退というのもなるほどな…、という印象です。
FM-77が登場していましたが、フロッピーディスクドライブの無い低価格のFM-NEW7のほうが、割合としては高くなりました。
日立
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日立 シリーズ別販売割合(1984年度) (データ:ヤノ・レポート 昭和60年9月17日号より)
日立は、NECやシャープよりも早く個人向けパソコン(製品名:ベーシックマスター)を発売したメーカーです。1982年(昭和57年)ごろ(?)までは、「パソコン御三家」といえばNEC、シャープ、日立でした。
このグラフの「MB-6892」は、前年(1983年(昭和58年))の4月に発売した最後のベーシックマスター、レベル3Mark5です。
日立はMSXへ参入しつつも、参入後の1984年(昭和59年)にベーシックマスターシリーズを発展させたMB-S1シリーズという独自パソコンをリリースしました。富士通と同じく「自社PC」+「MSX」の二刀流です。
後発なだけあってS1は他の8ビット機よりも高速だったようです。日立独自のS1は、低価格な共通規格のMSXに販売台数としては負けていますが、販売価格が3倍くらい高いので、売上高としては五分五分ではなかったかと思います。
ソニー
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ソニー シリーズ別販売割合(1984年度) (データ:ヤノ・レポート 昭和60年9月17日号より)
ソニーはMSXの代表的なメーカーの一つですが、MSX参入前に、3.5インチFDD搭載のSMC-70という独自パソコンを展開していました。SMC-70の後継機SMC-777は、MSX参入1号機のHB-55と同時期に発売。SMC-777とHB-55は、ともに「HIT BIT」の愛称を持っていて、雑誌広告やカタログでも一緒に宣伝されたりしていました。
台数としては、ソニー独自のSMCシリーズよりも、低価格なMSXのほうが売れたようです。
なおデータ元ではSMC-70とSMC-777を合算した値のみでしたので、このグラフも合算したものになっています。
東芝
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東芝 シリーズ別販売割合(1984年度) (データ:ヤノ・レポート 昭和60年9月17日号より)
東芝も、MSX参入前にパソピア(PASOPIA)という独自パソコンを展開していました。東芝MSXの愛称は「パソピアIQ」ですが、パソピアとパソピアIQとの間では、特に連携機能や互換性があるわけでもなさそうです。
パソピア(7/5/初代)も東芝の中ではそこそこの割合を占めていますが、それでも独自規格のパソピアよりも共通規格のMSXが売れたようです。
三菱電機
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三菱電機 シリーズ別販売割合(1984年度) (データ:ヤノ・レポート 昭和60年9月17日号より)
三菱電機も、MSXだけでなくMULTI8という独自パソコンを展開していました。MULTI8は、MSX参入1号機ML-8000よりもちょっと早いタイミングで発売開始。でもその時期は「MSXが出るぞ」とアナウンスされていた時期でもあり、パソコンを買う立場としては未知なる新シリーズのMULTI8は選びにくいだろうな…という感じがします。
三菱電機内で比較してもMULTI8はMSXの10分の1以下であり、パソコン市場全体でも厳しいシェアとなりました。MULTI8シリーズは1機種限りでしたが、MSXマシンはその後も展開していきました。
松下電器(National)
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松下電器 シリーズ別販売割合(1984年度) (データ:ヤノ・レポート 昭和60年9月17日号より)
MSXのもう一つの代表的なメーカーである松下電器も、MSX参入以前はJRシリーズという独自の低価格パソコンを展開していました。JRシリーズは品薄になることもあったほどの人気商品でした。
しかし1983年末には松下の家庭用パソコンがMSXに一本化され(日経新聞 1983年12月26日報道)、1984年度(昭和59年度)の販売は無かったようです。

シリーズ別販売台数(シェア)

興味深いグラフになりました。

シリーズ別販売台数(1984年度)(詳細) (データ:ヤノ・レポート 昭和60年9月17日号より)
※初出時はカシオ計算機とパイオニアを入れ違えてしまいましたので、訂正します。(2023/2/9)
さすがPC-8801(NEC)は、強い。ダントツの1位です。
2位はX1(シャープ)。
3位は意外にもソニーのMSX。

※ソードのm5シリーズとかトミー工業のぴゅう太シリーズとか、今回の資料には出てきてないですが、データ元に記載が無かったもので…。
「その他」に含まれているのか、集計対象から漏れているのか、ちょっと不明です。

ふと、もうちょっとまとめたほうがいいな…と思ったので、まとめてみました。

  • MSXは1つの勢力なので、ひとつにまとめる
  • PC-6601は、PC-6001mkII(model20)みたいなもの(暴論かも)だからまとめよう
  • FM-NEW7, FM-7, FM-8もまとめちゃえ(でもFM-77は、PC-80に対するPC-88のような存在な気がするので別扱い)
  • FM-77は、FM-8/7/NEW7とまとまちゃおう(データ元ではシャープのX1turboがX1にまとめられてるっぽいので) (2023/03/12変更)
  • MZ-700とMZ-1500も、同じグループとみなしちゃえ
  • パソピアたちも、まぁパソピアグループなのでまとめる
で、こうなりました。この1年間で販売された8ビットパソコンの3台に1台がMSXだった、というのは興味深いです。10数社が集まってやっとNEC1社分、という解釈もできますが。
シリーズ別販売台数(1984年度) (データ:ヤノ・レポート 昭和60年9月17日号より)
シリーズ別シェア(1984年度) (データ:ヤノ・レポート 昭和60年9月17日号より)

最後にもうひとつ、MSXのメーカー別シェア。
1984年は、僅差でソニーが1位でした。「その他」は、ヤマハ・日本ビクター・パイオニア・ゼネラルだろうと思いますが、なんとなくヤマハがこの統計に含まれてるのかちょっと不安。
※初出時はカシオ計算機とパイオニアを入れ違えてしまいましたので、訂正します。(2023/2/9)

MSXのメーカー別シェア(1984年度) (データ:ヤノ・レポート 昭和60年9月17日号より)

そして、各社各機種の一覧(チャート)は →  【こちら(別タブで開きます)】